全国に広がるキノッピ・グループホーム経営の輪<第2弾>

  • インタビュー

障がい者福祉の課題解決には、一社だけの力では限界があります。だからこそ私たちは、志ある仲間を全国に増やすべく、兼業社会起業家を育てる【障がい者グループホーム経営サロン】を立ち上げました。福祉に想いを持ちながらも一歩を踏み出せなかった方々が、グループホーム開業というかたちで地域に貢献し始めています。
今回は、そんなサロンの仲間である3名の社会起業家にインタビューし、それぞれの想いと実践をご紹介します。

千葉県佐倉市・ちるはうす 岸さん「境遇も経験も、全てを活かして高みを目指す」

今回登場していただくのは、千葉県佐倉市でグループホーム「ちるはうす」を運営している、株式会社ヴァンテージポイントの代表・岸さん。
当社代表・紀(きの)との出会いから開業までの道のり、ご自身やご家族の経験が結びついているという事業への思い、これからの夢についてうかがいました。

【プロフィール】
株式会社ヴァンテージポイント
代表取締役 岸 紘之(きし ひろゆき)さん
会社員として働きながら、2023年4月、紀のセミナーに3期生として参加。2024年2月に千葉県佐倉市で障がい者グループホーム「ちるはうす」を2棟同時オープン。2025年3月現在も会社員との兼業で、2棟を運営中。
https://www.vantage-point.jp

2年経っても消えなかった「当事者」としての可能性

紀との出会いはいつでしょうか?

紀さんのセミナー1期生募集のタイミングで出会いました。
会社勤めと並行してアパート経営をしており、大家さん繋がりで紀さんを紹介してもらったんです。
すぐに申し込んだZOOMでの相談会で、初めて「障がい者グループホーム」を知りました。

その時は、どんなお気持ちでしたか?

「これだ!」と衝撃を受けました。
実は30代前半に、鬱病を経験したことがあるんです。その時に心療内科を受診して検査をしたところ、発達障害があることがわかりました。ずっと「生きづらいな」と感じていた理由が、やっと腑に落ちたんですよね。
また、僕には息子と娘がいるのですが、2人とも発達障害の診断を受けています。
当事者として、またその家族としてできることがあるのでは、と事業に可能性を感じました。

相談会から、すぐに「やってみよう」と決断されたのでしょうか。

いえ、初めて紀さんからお話を聞いたときは、家庭の事情も重なって「今のタイミングではないな」と一旦はお断りさせていただいたんです。
でも、そこから2年ほど経っても「チャレンジしてみたい」という気持ちは変わらず、むしろ倍くらいに膨らんでいました。
満を持して妻に相談すると、「うん、やろう」と即答してくれました。妻は10代の頃に精神疾患を患い、入退院を繰り返していた経験をしています。僕も妻も、病気の辛さや苦しみを知っているんです。
僕たちの経験を生かした生活支援ができないか?そんな思いで約2年越しに紀さんに連絡したところ、快く受け入れてくださいました。
紀さんのセミナーで開業に向けての知識を学び、事業を始める決意を固めていきました。

個別性という核から生まれた「シェアハウス」

福祉の仕事は初めての経験ですよね。ご家族以外の方々の生活に関わることに不安や抵抗感はありませんでしたか?

それは特に感じませんでしたね。
僕も妻も福祉未経験だったことが、かえって良かったのだと思います。「福祉とはこうあるべき」といった固定観念にとらわれなくてすむので。
だから「ちるはうす」は施設というより「シェアハウス」に近い雰囲気がありますね。
「ちるはうす」を始めるにあたって大切にしたのは、運営側の型に当てはめるのではなく、利用者さんに合わせた支援をしよう、ということ。
自分の子供たちでさえ違いがあるのだから、利用者さんとなれば一人ひとり違って当然です。個々の特性を早く見極めて、それぞれに合った支援を提供することを何より重視しています。

利用者さんの特性を見極め、理解するために取り組んでいることはありますか?

まずは相手と向き合い、時間をかけて話をすることです。
「ちるはうす」は、2棟とも4名入居のグループホームです。小規模ゆえに、一人ひとりとしっかりと向き合えるのが大きな強みだと考えています。
利用者さんには「僕たちが偉いわけでも、あなたたちが偉いわけでもないよ、対等な関係だよ」と伝えるようにしています。そのせいか、最近はいろんな相談もしてくれるようになりましたね。

スタッフ同士のコミュニケーションで大切にしていることはありますか?

福祉職の経験がある人もない人もいるので、コミュニケーションはマメにとっています。
業務中は基本的に個々で動いているので、悩みや壁にぶつかることも多いです。そのため悩みは放置せず、積極的に報告や相談を重ねて、解決していくことを心がけています。
なにしろ初めてのことなので驚く出来事もあるのですが、それもまた経験として楽しんでいますね。「こういう時はこう対処したらいいんだ」と振り返って、日々の支援に生かしています。

過去は全部、今の幸せに繋がっている

約1年間ホームを運営されてみて、最初に抱いていたイメージとの違いは感じていますか?

ほとんどイメージ通りです。「こんな場所を作りたい」と思っていたものが、そのまま形になっていると感じます。

素晴らしいですね。理想を形にできた原動力はなんだったのでしょう?

もともと若い頃は目標や夢がない人間だったんです。
ただ、「誰かが敷いたレールに乗るのではなく、自由な人生を送りたい」と漠然な思いだけは常に持っていたように思います。
そして、20代で結婚して親になり、30代に入ってから「何かにチャレンジしてみたい」という思いが強くなりました。ただなんとなく働いて、なんとなく年を取り、なんとなく人生を終えるのは嫌でした。
紆余曲折あった人生で気がついたのは「人に感謝されること」が一番の幸せなんじゃないかということです。
そこからアンテナを張って情報を集めるようになり、障がい者グループホーム事業と出会いました。これまでの経験を活かすことができる。「もう、これしかない」と確信して、今に至ります。
だから今、利用者さんやご家族が「ちるはうすに入ってよかった」と言ってくれることが本当に嬉しいんです。

受け皿を広げ、さらなる高みを目指す

これからの「ちるはうす」については、どんな夢や目標がありますか?

現在は2棟を運営していますが、この方向性で良いのだという感触をつかんでいます。今後はさらに多くの人を支援できるように、受け皿を広げたいですね。また、利用者さんには様々な境遇の方々がいます。
家族とのコミュニケーションが取れている場合は、これからもご家族と連携をとりながら、支援がより充実するように努めたいですね。
一方で、家族と疎遠だったり、不仲だったりする方に対しては、私たちが家族の代わりになれたらと思っています。

最後に岸さん自身の夢を教えてください。

「ヴァンテージポイント(VANTAGE POINT)」という会社名には、「見晴らしのいい場所」という意味があります。2年越しに紀さんに連絡してから今日まで、一歩一歩階段を登ってここまで来ました。
これからも着実に歩みを進めて、高みを目指し続けたいですね。

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