障がい者福祉の課題解決は、一社の力だけでは成し遂げられません。だからこそKINOPPIは、志ある仲間を全国に増やすことを選びました。私たちが立ち上げた【障がい者グループホーム経営サロン】では、福祉経験の有無にかかわらず、“暮らしを支える覚悟”と学ぶ姿勢を持つ方々が、経営者としての一歩を踏み出しています。目指しているのは、「想いだけ」で終わらせないこと。支援を“続く事業”へと昇華させる実践者を育てることです。
今回は、そんなサロンの仲間の一人、埼玉県狭山市でグループホーム「わわわHOUSE」を運営する、合同会社わわわ代表・中村創さんにお話を伺いました。
もともとは中学校教員として特別支援学級を担当していた中村さん。
現場で培った視点を、どのように経営へとつなげたのか。
当社代表・紀との出会いをきっかけに踏み出した挑戦と、サロンでの学びについてお聞きしました。
教師から障害者グループホーム経営へ
― 「できる力」を前提にした運営と、サロンで学んだ経営視点

グループホーム経営を志したきっかけ
中村さんがグループホーム経営という選択肢に出会ったのは、戸建投資家のLINEグループでKINOPPIが運営する「障害者グループホーム経営サロン」の案内を目にしたことがきっかけでした。
しかし、最初からグループホームを目指していたわけではありません。中学校教員として勤務するなかで、「いずれは教員以外の形で社会に関わりたい」という思いを持ち始めたという中村さんは、将来的に自分で何かを立ち上げたいと考え、不動産投資や個人投資について情報収集をしていたといいます。
中村:実は、僕自身が不登校だったんです。そのときに通っていたフリースクールが本当に楽しくて。何かを強制されるわけでもなく、ただ“居ていい”と思える場所でした。だから、いつかはそういう居場所を仕事としてつくれたらと思っていました。
フリースクールをどうビジネスにすれば良いかわからなかった中村さんは、まず投資家として物件を持つことができたらいずれ、フリースクールや居場所づくりに辿り着くだろうと考えていたところ、「障害者グループホーム経営サロン」の案内を目にします。
中村:グループホームのことは全く知りませんでしたが、教員として勤務した最後の4年間は特別支援学級を担当しており、生徒のキャリア教育などにも関わっていました。学校を卒業したあと、どこでどう生活するのか。そこに十分な選択肢があるのか?という疑問をもち始めた時だったので、「この子たちの居場所をつくる」という意味で、魅力を感じました。
その決断を支えていたのは、教員時代のある実感でした。
特別支援学級で感じた「思っているより、できる」

夏に経営サロンの案内を受け取り、10月には辞表を出していたという中村さん。特別支援学級を担当した原体験はグループホーム経営に活かされているのでしょうか?
中村:特別支援学級では、一人ひとりに個別の支援計画を立てます。保護者と面談し、必要に応じて福祉とも連携する。実際にやっていることは、今のグループホーム運営と本質的には近い部分が多いと感じています。
教育現場で大切にしてきたのは、「一人ひとりに合わせる」という視点でした。画一的な支援ではなく、その人の特性や希望に応じて環境を整えていく。この考え方は、グループホームの運営にも通じています。
フランチャイズという道も検討しましたが、最終的に経営サロンで学びながら自ら立ち上げることを選びます。その背景には、「個別支援」という発想と同じく、運営もまた自分の考えで組み立てたいという思いがありました。
中村:やり方は学びたい。でも、運営の方向性は自分で決めたい。サロンは、ノウハウを教えてもらいながらも、自分で考え、自分で動くスタイルでした。そこが自分には合っていました。
支援の現場で培った姿勢が、そのまま経営のスタンスにもつながっているようです。
わわわHOUSEの運営方針 ― 「自立支援」と「家庭の空気」
わわわHOUSEが掲げる基本方針は「自立支援」です。「やれることは、自分でやる。世話人は“やってあげる人”ではなく、“やり方を伝え、見守る人”」という考え方で、特別支援学級で感じた“できる力”を前提に、支援を設計しています。
中村:できることを奪わないことが大事だと思っています。過度な支援は、結果的に自立の機会を減らしてしまうこともあります
その人の特性や希望を丁寧に把握し、必要な支援を組み立てていく。支援を固定しません。できることが増えれば関わり方を変え、調子が落ちているときは支援を厚くする。これは、教育現場で培った視点でもあります。画一的に揃えるのではなく、一人ひとりの伸びしろを見ながら関わる。その姿勢が、現在のホーム運営にも活かされています。
そして、もう一つの大きな特徴が、手作りの食事です。

中村:家庭の雰囲気を大事にしたい。施設ではありますが、生活の場でもあるので。効率だけを考えれば、他の選択肢もあります。ただ、食事は生活の中心です。そこに会話があり、役割があり、日常がある。
冷凍食品や外部委託も検討したが、最終的に手作りを選択しました。メニューは固定せず、スタッフが予算内で工夫し、 利用者が一緒に調理を手伝うこともあるといいます。
中村:“今日何食べたい?”というやり取りが自然にあること。それが家庭に近い空気だと思っています。
食事の時間は、単なる栄養補給ではなく、コミュニケーションの時間でもあります。役割を持ち、会話が生まれ、日常が積み重なっていく。その積み重ねこそが、自立へとつながる土台になると中村さんは考えています。
経営のリアルとこれから ― 支援と経営は同じではなかった
支援そのものについては、大きな戸惑いはなかったと中村さんは振り返ります。
中村:子どもと向き合ってきた経験があったので、利用者対応に大きな違和感はありませんでした。
一方で、経営はまったく別の領域でした。採用の難しさ、シフト設計、経理や事務処理。棟が増えるほど、マネジメントの比重は確実に大きくなっていきます。現在は常勤スタッフ体制を整え、運営基盤の安定化に取り組んでいる最中です。
中村:支援が得意でも、経営が回らなければ事業は続きません。サロンで学んだのは、“良いことをやる”だけではなく、“持続可能にする”という視点でした。
今後は、住まいの提供にとどまらず、「働くきっかけ」を広げていきたいと語ります。生活が安定したその先にある社会参加や就労を見据え、小さな挑戦の場をつくっていきたいと考えています。地域の中には、まだ十分な受け皿が整っていない領域もあります。軽度・中度の方が活発に生活できる場を増やすことも、今後のテーマの一つだといいます。

最後に、これからグループホーム経営を目指す人へのメッセージを伺いました。
中村:支援経験がある人は、現場はある程度イメージできると思います。ただ、経営は別のスキルが必要です。収益性は大切ですが、それだけでは続きません。自分がどんなホームをつくりたいのか。その軸が定まっていれば、迷いは減ると思います。
教師から経営者へ。
立場は変わっても、一貫しているのは「できる力を前提にする」という姿勢です。
わわわHOUSEでは今日も、家庭に近い空気の中で自立を支えながら、持続可能な経営の形を模索しています。
KINOPPIが「障がい者グループホーム経営サロン」を通じて目指しているのも、まさにこうした実践者を増やすことです。想いをかたちにし、支援を“続く事業”へと育てる経営者が、全国に広がっていくことを願っています。
<関連リンク>
中村さんが経営する埼玉県狭山市の障がい者グループホーム「わわわハウス」
https://www.gh-wawawa.com
KINOPPIが運営する「障がい者グループホーム経営サロン」
https://kinoppi-salon.com/