障がい者福祉の課題は、福祉業界だけでは解決できません。
KINOPPIが運営する【障がい者グループホーム経営サロン】には、福祉未経験の会社員や、不動産・IT・営業など異業種で培った経験を持つ人たちが集まっています。
今回お話を伺ったのは、障がい者グループホーム「ユーカリの家」を運営する渡邉さん。
大手IT企業でDXプロジェクトに携わりながら、複業としてグループホーム事業をスタート。2024年に開業し、わずか2年弱で6棟の運営へと拡大。現在は会社員を卒業し、事業に専念されています。
「福祉経験がない自分にできるのか」
そんな不安を抱えながらも、一歩を踏み出した理由とは。
異業種だからこそ見えた福祉業界の課題、仕組み化への視点、そして“支援を続けられる事業”をつくるために大切にしていることについて伺いました。
福祉経験ゼロでも、やり切る覚悟があればグループホーム経営はできる。
プライム上場IT企業の会社員だった渡邉さんが、“副業から福祉業界経営者の道”に踏み出した理由

「自分にもできることがあるかもしれない」
渡邉さんは、新卒から8年間、大手SIerでDX関連のプロジェクトに携わっていました。
一方で、新卒3年目頃から不動産賃貸業にも取り組み、戸建て、アパート物件を自らリフォームしながら運営していたといいます。そんな中、不動産仲間から紹介されたのが、KINOPPIのグループホーム経営サロンでした。
渡邉:不動産仲間から、“グループホームっていう事業があるんだよ”って聞いたのが最初でした。その方が既に紀さんのコンサルを受けていて、初めてこういう世界があることを知りました。
渡邉さん自身もともと福祉業界にいたわけではありません。
しかし、精神科病棟で看護師として働くお母様から、日頃から現場の話を聞いていたこともあり、“住まいがないことで地域に戻れない人がいる”という現実は、どこか身近な問題として感じていたそうです。
渡邉:病棟に、本当は退院できるはずなのに、帰る場所がない人がたくさんいると聞いていました。親御さんが高齢だったり、受け入れ先がなかったり…。それを聞く中で“自分にも何かできることがあるんじゃないかな”と思いました。
“住まい”がないことで、地域で暮らせない。
その課題に対して、経験のある不動産と福祉を掛け合わせることで、自分にも役割を持てるかもしれない。
そう感じたことが、グループホーム経営へ踏み出す最初のきっかけでした。
「不動産賃貸業」と「グループホーム経営」は、思った以上に近かった
渡邉さんは、もともと戸建て、アパートを中心に不動産賃貸業を行っていました。築35年の戸建てを自らDIYで改装し、貸し出したのがスタート。今では26室のオーナーだそうです。その経験は、グループホーム経営でも大きく活きました。
渡邉:物件を探して、コストを抑えて、リフォームして、価値を上げて提供する。そこは不動産賃貸業とすごく近かったですね。
もちろん、一般賃貸とグループホームでは大きな違いもあります。ただ、“住まい”を扱うという意味では、根本は近い、そう感じたといいます。
しかし、実際に運営を始めてみると、“ただ部屋を貸す”のとは全く違う責任の重さも感じるようになりました。
渡邉:グループホームって、“衣食住”の“住”、場合によっては食も支える仕事なんですよね。しかも、そこから自立支援にもつながっていく。単なる不動産ではなくて、“暮らしそのもの”に関わる仕事だと思っています。
単に部屋を提供するだけではなく、その人が安心して生活できる環境を整える。
その積み重ねが、少しずつ社会参加にもつながっていく。
そこに、この仕事の大きな意味を感じているそうです。
「全部自分でやらない」と決めていた

2024年4月に勉強を始め、同年9月には最初のホームを開業。しかも当時は、まだ会社員として働きながらの複業でした。現在は6棟を運営していますが、そのスピード感の背景には、「仕組み化」の視点があったといいます。
渡邉:最初の一年弱くらいは、自分で全部現場に入っていました。でも最初から、“仕組みをつくって回る状態にしたい”っていう意識はありました。
グループホームは、24時間365日続く事業です。
だからこそ、“自分一人が頑張る”形では、長く続けることが難しい。
その考えから、渡邉さんは現場を理解した上で、徐々に役割を移譲していきました。
現在は、もともと夜勤スタッフとして働いていた方を正社員登用し、現場運営を任せています。
渡邉:私は福祉未経験だったので、私の足りない部分である現場の知見をお持ちの方をうまく巻き込んだ方が、より質の高い支援ができると思いました。
だからこそ、“全部を一人で抱え込まない”。
経営・仕組み・数字を見る人。
現場支援を担う人。
それぞれの得意分野を持ち寄ることで、グループホームは回っていく。それは、異業種から参入した渡邉さんだからこそ持てた視点なのかもしれません。
「働けなかった人」が、また社会に出始めた

この仕事のやりがいについて尋ねると、渡邉さんは、ある利用者さんの変化を話してくれました。
渡邉:最初は、日中ずっと家でYouTubeを見ている状態だったんです。でもうちに住んで半年、一年と経った頃に、“近くの就労に通ってみたい”とご本人から言ってくださって。
最初は、外に出ること自体が難しかったといいます。
しかし、ホームでの生活を続ける中で、少しずつ変化が生まれていきました。
最初は週1回だった通所が、やがて週2回へ。
少しずつ社会との接点を取り戻していったそうです。
渡邉:生活の基盤が整うことで、人は変わっていくんだなと思いました。社会への参画を、少し後押しできたのかなと思っています。そういう入居者さんの変化をみると、”やってて良かったな”って思いますね。
グループホームの役割は、ただ“住まい”を提供することではありません。
安心して暮らせる場所ができることで、人は少しずつ外の世界との接点を取り戻していく。
学校や病院ではなく、“暮らし”の場だからこそ生まれる変化がある。
その実感が、渡邉さんにとって大きなやりがいになっているようでした。
異業種だからこそ見えた、福祉業界の課題
実際に運営してみて感じたのは、福祉業界のアナログさだったといいます。
渡邉:記録が手書きだったり、勤怠もタイムカードだったり。IT活用はかなり遅れているなと感じました。
大手SIerでDXに携わってきた渡邉さんから見ると、“まだ改善できる余地が大きい業界”にも見えたそうです。
特に課題を感じているのが、相談支援の領域でした。
渡邉:相談支援員さんは、本当に忙しいんです。その方たちが、本来向き合うべき支援に集中できるように、ITで効率化できたら、業界への貢献度は大きいと思っています。
異業種から入ったからこそ、「当たり前」を疑える。
それもまた、この業界に新しい人が入る価値なのかもしれません。福祉経験がないことは、必ずしも弱みではない。
むしろ、別業界で培った経験が、新しい仕組みや支援の形につながる可能性もある。
渡邉さんの話からは、そんな視点が感じられました。
「迷ったら、まずやってみる」
最後に、これからグループホーム経営に挑戦したい人へのメッセージを聞きました。
渡邉:やる前って、不安がすごく大きいと思うんです。でも、一歩踏み出してみると、新しく見えるものが絶対あります。
渡邉さん自身も、最初から福祉経験があったわけではありません。
それでも、“まずやってみる”ことを選びました。
渡邉:会社員として働きながらグループホームの経営となると本当に大変なので、“やり切る覚悟”は必要ですね。
福祉経験があるかどうかよりも、本当に大切なのは、“やると決めて向き合えるか”。
IT、不動産、経営。
異業種で培った経験を持つ人たちが福祉に関わることで、支援の形はもっと広がっていきます。
渡邉さんの挑戦は、KINOPPIが目指す「支援を続けられる仕組みづくり」の可能性を感じさせてくれるインタビューでした。
<関連リンク>
渡邉さんが経営する埼玉県さいたま市のグループホーム「ユーカリの家」
http://eucalyhouse.com/
KINOPPIが運営する「障がい者グループホーム経営サロン」
https://kinoppi-salon.com/